中学受験はもっと気楽に考えていい。③
2023年3月11日
続きです。
この時期になると「御三家に〇〇名合格しました」を謳った塾の広告をよく目にします。これは何のアピールか?ということです。「うちに入れば御三家にだって受からせますよ」「うちの塾が入れてやったんたんですよ、すごいでしょう」ということなんでしょうね。「入塾時偏差値が30だった子をたった1年で御三家に」だったら、「おー」と称賛に値するのですが、現実はそのような夢のような事例は皆無に等しいです。受かる子は大体は元からできる「才能保持者」であり、仮にその子が御三家に入れたとしても、それは子どもが素晴らしいからであり、塾が特別優れているというわけではないのです。もしその塾が本当に優れているなら生徒全員を第一志望校合格に導いているはずなのです。「親御さんに期待と幻想を抱かせるような広告」っぽいものについてはそろそろ冷静な見極めが必要なのではないでしょうか。私ならこんな勘違いされそうな広告は出しませんし、そもそも過去にも出したことはありません。塾にとって大事なのは「自画自賛」ではなく、「顧客満足度を高める」こと。そこを見失ってはいけません。
スポーツや音楽、芸能の世界では「才能」についてよく言及されますが、勉強についてはなぜか「「努力」が「才能」を凌駕する」「頑張れば何とかなる」みたいな語られ方をされることが多いです。しかし現実は、こういう御三家レベルの学校(四谷偏差値70以上)に受かる子はただの努力家ではなく、(私の知る限り)それに先天的な才能がプラスされた生徒がほとんどで、そういう才能の持ち主は通っている塾に関係なく受かります。つまり合格力と塾力との相関関係は意外と低く(塾でよほど変な指導をされない限り)その子たちは才能通りの学校に順当に受かるのです。ですから「受からせてやった」みたいな塾に対しては「傲慢だな」という印象しか持てないのです。では、才能に関係なく努力オンリーで受かる最上限の学校は?と問われれば四谷偏差値で60〜65ではないかと当塾では考えていますので、「うちの子は平凡なのですが・・」に該当するお子さんは最大限に努力しその辺りの学校に入れれば大成功だと思うのです。当方ははどちらかと言うと「できない子をできる子にさせて受からせる」「できない子に学習の楽しさを伝える」ことを喜びにしていますので、是が非でも御三家に、という方は他を当たってみてください(笑)。
元々当方では御三家受験をあまりお薦めしていないのですが、それは(投資家目線で見ると)「コスパが悪い」からです。例えば必死に頑張って開成に進学しても、そのうち半分以上が東大に行けるわけではないのです。その後、仮に早慶に進学したなら「どうしちゃったの?」「だったら初めから早慶の付属でよかったのに」とか、それ以下だと「何やってたの?」とか、とにかく「不当な扱い」を受けます。労力の割に必ずしも出口がいいわけではないし、出口の内容次第は評価が下がってしまうリスクもあるのです。また仮に東大に進学したとしても就職後の平均年収は1000万前後です。投資家としては「血の滲むような労力を重ねてきたのに本当にきちんとコスト以上の成果を回収できているのか?」と少し疑問に感じてしまうのです。まー、個人的にはそこそこの努力で中堅校に進学し(そこで頑張り)→マーチ以上あわよくば早慶に進学→そこそこの上場企業に入る、のが一番コスパが良いように思うのですが、皆様はいかがお考えでしょう?
さて、前回は「サンクコストを考え過ぎない」というお話をしました。「失敗し過去を過度に後悔する」のは無理を重ねてきたからです。予想以上に時間をかけてしまった・費用をかけてしまった・労力をかけてしまったとき、人は「取り返そう」「かけた以上の成果を出さなければ」と焦ります・そしてそれがうまくいかないと「人生終わった」みたいな気分になるのです。たかが「中学受験」というイベントごときで、ですね。
小学校に上がると同時に中学受験に向け塾を探し、遊びを封印させ勉強勉強の毎日にし、ギリギリまで教育費をかける、家庭では学習をめぐり毎日が親子喧嘩、これで落ちたらショックですよね。しかし、これこそが「無理を重ねてきた」ということなのです。そして一番の問題点が、その過程で誰一人幸福感を味わっていないことです。「欲しがりません。勝つまでは」が過ぎると、人間は不幸になるのです。
ちなみに永田は我が子の受験を5年からスタートさせました。普通に遊ばせましたし塾通いも1年弱でした。家庭での勉強の話題はほとんどなし。ストレスゼロに近いまま、なんとか志望校に受かりましたが、仮に全落ちしても「ま、いいか。公立で」「そうなりゃ大学受験で頑張ればいいじゃん」と諦めがつきやすい環境下で受験準備期間をセッテイングしました。こんな風にのほほんとしていられたのも「全く無理のない受験」をしてきたからです。
投資は無理をすると必ず逆に作用します。軽いタッチくらいがちょうどいいのです。
日々ストレスを感じない程度の、且つ失っても許容できる範囲の「学習期間・費用・労力」がどの程度のものであるのか?
それを想定・確定させてから入試に臨む。そして全落ちしても「ま、いいか」「この努力は必ず糧になる」「結局、学歴とは大学歴、そこで勝てればいい」くらいの前向きな気持ちの気持ちでいてください。
「中学受験は都会っ子のイベントに過ぎない」くらいの気楽さで。