中学受験はもっと気楽に考えていい。②
2023年3月06日
続きです。
公立中〜高校出身で塾に通った経験なし。そんな私でさえ何とか生きていられるのですが、東京生まれで恵まれた経済環境下で育った子どもたちの多くは中学受験を目指します。当塾は豊洲を中心とした湾岸地区を拠点にしていますが、この地に住まう親御さんの多くはタワマンに住み、学歴・職業・勤務先から判断しても「エリート」と呼ぶに相応しい方々ばかりです。ですが、中学受験を体験されている方は意外と多くありません。個人の印象ですが「西日本」出身の方が多いですね。泥臭い言い方ですが「地方から這い上がり成功を収めている人」というイメージです。
こういう方々の特徴は頭脳明晰であるとか以前に間違いなく「努力家」であるということです。ですので自分がやってきたことは子どもにも伝承させたい・自分の子にも努力させたい、そしてそこで得た体験を重視し今後の糧にしてもらいたい、そう考えている親御さんが多いような気がします。もちろん「中学受験を成功させたい」という大前提はあるのですが。
ですが、そのようなご家庭であっても(例えば)全落ちした、などという事態になれば冷静でいられなくなります。親御さんの心中は2月1日で合格が得られないと動揺し、2日もダメだとパニックになり、3日もダメだと「受かればもうどこでもいい」になり、4日がダメだと「終わった」になります。そして5日もダメで結局全落ちし、いよいよ地元の公立中学への進学が決定すると「こんなはずではなかった」と気落ちし、過去の後悔と未来への不安、この両方で今日という貴重な1日を費やしてしまうのです。そしてその茫然自失の状態が半年近く続いてしまう。これは受験生の親御さん(特にお母様)あるあるですね。
さて、私は塾の講師ですが一方で投資家でもあります。その投資家の視点で申し上げますと「サンクコストは考えない」が成功のセオリーです。私の主観かも知れませんが日本人はサンクコストに執着しすぎるのではないでしょうか?例えば満州事変から日中戦争への流れは「この地で死んでいった何万の兵士のために何としてでも彼の地を奪回せねば」の気負いが結局不毛な長期戦の発端となり、日本陸軍を疲弊させる結果となりました。つまり「取り戻さなければ」の意識が強すぎると取り戻せるどころか、却って新たな損害を招いてしまう、ということなのです。私個人の経験でも、例えば株式やFXなどに投資すれば1日で平気で百万二百万程度は値が上下しますし、場合によっては損切りすることもあります。しかし沈んで消えたお金を数えてもそれは返ってきません。そんな時はリセットし、次の日に新たな気持ちでチャレンジするしかないのです。
中学受験で不本意な結果に終わった方は(特に親御さん)は
全落ちするのがわかっていたら子どもに辛い思いをさせずに済んだのに、とか
全落ちするのがわかっていたら何年も勉強せずに遊んでいれば良かった、とか
全落ちするのがわかっていたら何年も塾代を払わずに贅沢すれば良かった、とか
何年も不毛な時間を過ごしてしまった、全落ちするのがわかっていたら別のことに時間を費やせば良かった、とか
こんなことで悩んだりします。ですが、成功している投資家はこのような苦悩を持ち合わせていません。ひたすら前を向くだけなのです(と言いますか、私も含め、過去を速攻で忘れる思考回路になっている投資家は多い)。教育・受験も「投資」であるとご認識いただいているなら、親子ともに(特に親御さんは)(少しで構いませんので)投資家マインドを持ち合わせ事に当たってもいいのかな、と考えます。
お気持ちはわかりますが、もしそうであるなら上記のような「地方の公立中高出身の親御さん」の成功の芽は最初からなかった、という理屈になりますが、実際は決してそうなっていないことをご理解いただければと思います。
中学受験の成功が望ましいのは、端的に申し上げれば後々訪れるであろう「大学受験に有利だから」(結局大事なのは大学歴)この一点であり、〇〇中学に通っていたこと自体が人生においてアドバンテージになることは稀なのです。
その辺りの「現実」を知れば、(親御さんが)中学受験に対し過剰までに喜怒哀楽を顕にするのは「いかに自分の視野が狭いか・人間が小さいか」を露呈することにもなるのです。それを厳に慎み、頑張るお子さんに対して寛大な心と余裕をお持ちいただき、励まし支えてくださればと思います。
次回に続きます。