[特記]中学受験の目的。②
2010年7月16日
先日は中学受験の目的が「合格を取りにいくことであるのは言うまでもないが、その過程を通し、目一杯頑張った自分がどのように成長していくのかを知ることでもある」というお話をいたしました。更に、「公立中学」というセイフティーネットがあるので逆に生徒さんたちは思いっきりチャレンジできる環境下にいられるということもお伝えしました。
ただ、これについては多少の違和感を覚える方もいらっしゃると思いますので補足させていただきます。上記に反論される生徒(親御さん)のお考えは、
「確かに公立中学はセイフティーネットだが、それは最後の選択であり、そこへの進学を希望して受験勉強をしてきたわけではない。公立中学に通う結果となる=中学入試に失敗するという意味であり、そうなると今まで頑張ってきた時間・費用が無駄になる。こんな結果になるくらいだったら普通の小学生みたいに気楽に過ごさせればよかった」と後悔する羽目になるということではありませんか?
失敗すれば誰でも意気消沈します。それは仕方ないことです。そして、「本当はもっとたくさん遊べたのに」とか「別のことに費用を回せばよかった」とか「子供に無理させてかわいそうなことをした」などと、挫折・後悔のあまり「死んだ子の年を数える」ような真似をしてしまいます。
入試までまだ二百日以上もある今からこんなブルーな話をして申し訳ございません。ただ、現実に起こり得る可能性のあることからは目を背けず、今から覚悟して明鏡止水の心境で入試に臨んでいただきたいのです。(長年いろいろな生徒・親御さんを見てきましたが、俗に言う「マイナス思考」の方が受験に成功するケースが多いです。根拠ない「プラス思考」は現実から目を逸らすための逃げ道・口実に過ぎません。そこに入り込んでしまうと自分を正当化し、自分の足りない部分の軌道修正することを怠る結果となり、ひいては受験で・・ということになります。)
話を戻しますが、そもそも「受験勉強をさせる」ことはかわいそうなことなのでしょうか?「遊ぶに没頭させること」が本当に幸せなことなのでしょうか?
もし、受験勉強を経験させなかった場合、その時間をどのように過ごしていたことでしょう?
おそらく、大半の時間はテレビ・ゲームに費やされたことでしょう。いわゆる「時間潰し」ですね。無為な日々を積み重ねるだけの結果。体だけは成長しても中身は空っぽ。その状態での公立中学進学。そして、勉強の習慣が身についていため向上心がないままの無為な日常生活の繰り返し。これが「幸せなこと」でしょうか? 遊びや休息は頑張った後のものだからこそ楽しめ、充実して過ごせるのです。「定年後の毎日が日曜日状態」からは本当の休み(遊び)の価値は見出せませんし、それが続くことは決して幸せなことだとは思えません。
かつて、ラサール中に受かったものの、家庭の事情で地元の公立中学に通うことになった教え子がいました。しかし、学習習慣とかなりの知識が身についていたうえに、持ち前の負けん気が功を奏し6年後東大に進学しました。つまり、「普通の公立中学生」と、たとえ受験に失敗しても学習習慣が身についていて、そこからある程度の知識を得ていた公立中学生とでは入学時点から能力に雲泥の差がついていることなのです。ですから、受験学習は長期的視野で考えれば全く無駄ではないのです。
また、「勉強させる」ことがかわいそうだというのでしたら、司法試験や国家試験、または将来歌手を目指そうとしてオーディションにトライする人は不幸な人たちなのでしょうか?「失敗するとつらいし、それだと意味がないから今のうちに止めたほうがいいよ」と説得すべきなのでしょうか? 目標が定まっている学習は続けるべきです。この場合、努力を途中で止めさせる方が却って挫折感を味あわせてしまう結果になります。「勉強させるのはかわいそう」と思うのでしたらそれは親子のうちどちらかが目標が明確でないか、もしくはそれほどの熱意がないか、または親が勉強に対し否定的な考えを持っているかに因ります。これに当てはまるようでしたら先の例とは違いますので、早々にリタイアすることをお勧めします。
次に費用ですがそれは余裕資金で行うべきです。お子さんの将来を真剣に考え、そこに教育費をかける方は親としての務めをしっかり果たしておられるので尊敬に値しますが、無理はいけません。家庭で計画的なポートフォリオを作成し、その中から(言葉は悪いですが)「たとえ失敗しても捨て金として許容できる範囲での額」を投資してください。受験の失敗が家庭全体に悪影響をもたらしてしまっては元も子もありません。
マイナス思考の話題に終始してしまいました。ただ今から「最悪の結果」をシュミレーションし、心の準備をしておくことで、何をすべきかを明確にし、迷うことなく残りの日々を過ごしていただいたいというのが本日の主旨です。
いろいろな悩みを抱え揺れ動く時期だと思います。もし、ご相談がございましたらお気軽に当塾にまでお問い合わせください。少しでもお役に立てれば幸いです。
次回は今回説明できなかった部分の補足です。
※ 当塾生の皆さん。夏期講習での国語はひたすら漢字・語句の記憶です。文章題は 授業内ですべてを伝授し仕上げてまいります。