伸びる生徒と伸びない生徒。⑤
2010年7月05日
「コツとは既製品ではなく、その人の人間力から醸し出された派生品である」「コツは他力本願ではなく、自らが編み出すことによってこそ価値がある」。先日は当ブログでも「社会ブログ」でも上記の内容をお伝えいたしました。
また、暗記(覚える作業)に欠かせないのが人間力(精神力)であるというお話もいたしました。その一例を記しておきます。
「熱意」・・どうしても成功させたいという継続的な熱意が、成功に不可欠な「覚える作業」を後押ししてくれます。
「忍耐力」・・暗記は苦しい。しかし、苦しいのは自分だけではありません。成功者全員が一度は通る道なのです。三日坊主で終わってしまう。それは「どうしても成功したい」という意欲に欠けているか、入試を甘くみているかのどちらかに因るものでしょう。
本日は暗記に不可欠な三つの要素を追加いたします。それは「自己顕示欲」「楽しむこと」「緊張感」です。
よく「雑学王」「生き字引」と言われる人がいます。「こんなことまで知っているなんてすごいな」と尊敬される一方、「そんなどうでもいいようなことを覚えたってしょうがないだろう」と思われてしまう人たちです。入試に必要な重要事項の暗記はそっちのけで、ポケモンに出てくるキャラクターの名前や、新幹線の駅の名前をだけは全て覚えている。そのようなお子さんはいらっしゃいませんか?
彼らは決して「歯を食いしばりながら」覚えたわけではないはずです。「ポケモンにハマった・鉄道にハマった」その延長線上での暗記ですので、単に好きなことの知識を増やす作業を行っただけ、つまり、「楽しみ」でやったことなんですね。そこから生まれる「自己満足」。更にその知識を友だちにアピールすると、みんなから「すごいねー」などと褒められる。そしてその快感から生まれる「自己賞賛」と「自己顕示欲」。これらがうまく回転して、次の知識吸収欲(暗記欲)へと繋がっていくのです。
私自身「歴代天皇の名前」「各時代の歴代将軍・執権の名前」「歴代総理大臣の名前」「百人一首」・・など(国語・社会の講師なら当たり前ですが)すべて暗記しています。これも「難行苦行の末」というよりは上記の理由に因るものです。だいたい社会科の講師というのはこういう「自慢したがりや」が多いですね(笑)。(ご父兄へ。お子さんをしっかり褒めてプライドを高める工夫をしていますか?お子さんが暗記したことを頑張ってアピールしようとしているのにそれを無下に扱ったり、ただ、高圧的に「覚えなさい!」と叱ったりしていませんか?「覚えること大好きっ子」にするもしないも「家庭力」次第です。気持ち良く学習させるための「演技力」に欠ける方は受験生の親として失格ですよ。)
そして、欠かせないのが「緊張感」。ダラダラ時間をかけているのに半分も覚えていない。これは「能力」の問題ではなく、「緊張感」の有無の問題です。最近は優しい先生・親御さんが増えているので、たとえ覚えてなくても「う~んしょうがないなあ」「次回は頑張るんだよ」と問題を先延ばしにしてしまいます。これがお子さんから「緊張感」を奪っているのです。
私の子供の頃の担任は期日までに覚えてこないと殴る人でした。怖くて怖くて仕方がない。だから覚えました。決して健康的な方法ではありませんが、場合によってはこれも必要なのかなと思います。(今これをやれば大問題でしょうが、緊張感を与えない大人に囲まれた環境にいると子供はますますひ弱になっていくのかなという感も歪めません)
ですから、生徒諸君!「優しい大人」に甘えず、時間と覚える量を決めたなら、自らの責任と「これを覚えないと合格しない」という緊張感をもって、完全暗記を目指し努力してください。
さて、突然算数の話題で恐縮ですが、公式を覚えることの大切さを認識し、実際頑張って覚えたはずなのに、それがテストで活用できない人はいませんか?基本問題はできるのに、応用問題だとからっきしダメな人はいませんか?
それは「既製品としてのコツ」を覚えるまでは良かったのですが、「なぜ、この問題ではこの公式を使うのだろう?」という理屈にまで追究していこうという姿勢に欠けているからです。掛け算を覚えたての低学年生で見られることですが、何でもかんでも「掛け算を使えばいいんだろう」とばかり無茶をします。例えば「身長160cm、体重50㎏のAさんが・・」という問題があれば即160に50を掛けてしまうといったように(そこから導き出された数字って一体・・・(笑)」。
これは笑い事ではありません。似たり寄ったりのことを君たち受験生もやっているのですよ。
次回はこの辺りを更に説明してまいります。