塾の役割とは。④
2016年2月29日
前回の続きです。
お子さんの益になるのはやはり「宿題をガンガン出す塾」ですね。これは間違いありません。一方「面倒見のいいお任せ塾」はその利点を謳っていますが、お子さんが週の中で塾に拘束される時間には限りがあり、その効果が限定的であるのが弱点です。お子さんは家庭で過ごす時間の方が多い。その時間を学習に活かさなければ合格には到達しません。前回も記しましたが、「頭がいい子」が受かるのではなく、「頭がよくなった子」が受かる。頭がよくなるかならないかは、こなした学習量に比例します。私の長年の講師経験から言えばこれも間違いない事実です。
特に算数のできる子は理系のひらめきがあるから解けるわけではありません。「あ、この問題見たことある、解いたことがある」と、過去の経験が豊富だからこそ解けるのです。過去の体験の積み重ねが算数のできる子を育てます。その体験が多ければ多いほど、答えを導く引き出しも増え、それらを融合させ複数の解き方を習得し、更にその「合わせ技」を幾通りも生み出し、などを繰り返せば、それが算数における「柔軟性」を育てていくことになります。
それを育てるのが「膨大な宿題」です。当然強制されてやる宿題をつまらないと考えるお子さんは多いでしょう。「児童虐待だ」などと言い出す親さえいるかもしれません。しかし、それがお子さんを鍛えていることは間違いありませんし、たとえ嬉々として机に向かわなくても、宿題をやる時間を確保すること自体が重要なのです(本当は自分から宿題を行う意義を理解し、自主的に行っていただきたいのですが)。
宿題は子どもだけの負担ではありません。チェックする講師も時間を奪われます。残業ですね。本音を言えば講師も宿題はあまり出したくないのです。更に、宿題の中身が「とても良い出来」だと、「答えを丸写しにしたのかな?」と不信感を持ちながら採点したり、まっ、何かとストレスが溜まるわけです。また、親御さんもお子さんができなかった問題を質問しに来たとき、忙しいが無下に拒絶するわけにもいかず、何とか答えようとしますが、中学受験の問題は大人にとっても相当難しい。それで説明がおぼつかないとお子さんから「お母さんの言っていることはよくわからない」と、またストレスが溜まってしまうのです(笑)。
ですが、お子さんが受験に向けどういう学習をしているのか?それを把握するために宿題が有効だという側面もあります。お子さんの受験に対する親御さんの関心の濃淡がそのまま入試の結果になることが多いのです。
宿題は生徒・講師・親を否応なく巻き込みます。ですが、巻き込まれることによりこの三者が受験に対しベクトルを揃えられるのであれば、宿題はそういう点でも有益です。
そのように宿題を捉えてみてはいかがでしょうか。